私は普段から味覚が広く、まずいと感じる食べ物はほとんどありません。ただし例外が3つあります:ヒゴダイ、ドリアン、そしてパンガシウスです。
ヒゴダイとドリアンは遺伝的な特性によるものですが、パンガシウスは完全な間違いです。魚類の世界に存在すべきではありません。正直なところ、アメリカの七面鳥の餌にすべき代物です。
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パンガシウス養殖の始まり
この魚は当初ソールフィッシュ(鰈の一種)として販売されていました。唯一の共通点?両者ともフィレ状で流通することです。それ以外の関連性はありません。
ベトナムではパンガシウスが政治変革をきっかけに普及し始めました。1986年グエン・バン・リンが共産党書記長に就任しドイモイ(刷新)政策が始まると、水産養殖が発展。メコン・デルタはこの魚の養殖に最適な環境で、成長が早く骨が少ない特性が、食文化の発展途上にある欧米の需要にマッチしました。
産業は急成長。当初は天然の稚魚を捕獲するしかありませんでしたが、すぐに養殖技術が必要とされるようになりました。
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養殖技術のブレイクスルー
1993年、ベトナムアンザン省の視察団が中国湖北省を訪問。1995年には湖北省水産研究所がベトナムと研究契約を締結。1997年、遂にパンガシウスの人工繁殖技術が確立されました。
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この技術革新が全てを変えました。2007年ベトナムが世界貿易機関(WTO)に加盟すると、パンガシウスは全世界へ輸出されるようになり、ベトナム水産業の黄金時代が幕を開けました。
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世界市場への進出
養殖技術の確立でベトナムはパンガシウス輸出国の筆頭に。しかし淡白な味わいと柔らかい食感が特徴のこの魚は、他の魚のような深い味わいを持たず、評価が分かれています。
成長が早く収益性が高い特性から多くの国で養殖される一方、工業的生産を優先した味覚面への批判も。それでも欧米諸国にとっては手頃で調理しやすい選択肢となっています。
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結論
パンガシウスはメコン川の野生種から世界的商品へと変貌を遂げました。その背景には政治改革、経済戦略、科学技術の進歩が存在します。強い個性を求める人もいれば、淡白な味を好む人もいますが、いずれにせよ世界の食文化に確かな足跡を残したことは間違いありません。