横断山脈は世界で最も若い山脈の一つであり、中国最長・最広・最も特徴的な南北走向の山系を形成しています。
チベット高原南東部に聳えるこの山脈には5000メートル級の峰が数十座連なり、深い谷間を無数の河川が駆け下ります。峰と谷の標高差はしばしば数千メートルに達し、この高山深渓の景観は「横断山脈に秘められた自然の驚異は果たして幾つあるのか」という問いを投げかけます。
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川西の王冠
大雪山脈の一部を成すヤラ雪山は「蜀山の王」貢嘎山のような世界的名声を持たないものの、カム地方で敬われる聖山です。タゴン草原から望むヤラ雪山は雪蓮華が開いた姿、あるいは巨大な銀の冠のように見え、「川西の王冠」の異名を持ちます。
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カム・チベット族はヤラを「東方の白牦牛」を意味する「シャム・ヤラ・ラジェ」と呼び、ムリ王国の守護神と崇めます。チベットの古典『神山志』ではヤラを「第二のシャンバラ」と記述しています。
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ヤラは単独峰であると同時に無数の雪峰の集合体です。標高5820メートルの主峰が蒼穹を指す傍ら、数多の山々と雪峰、渓谷、草原が相まってこの神秘の地を形作っています。
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ヤラ雪山景勝地はガルゼの中心に位置し、遠く貢嘎山と穆爾多山と対峙します。聳え立つ雪峰と周囲の渓谷は横断山脈の極致の美を体現しています。
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雪峰・氷河・森林・草原・湖沼・河川・瀑布・温泉がここに集結し、数多の希少動植物が生息する生物多様性の宝庫です。
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ヤラの麓は茶馬古道の要衝であり、チベット・羌・漢民族文化の交差点です。この特異な地理的条件が雪山の個性を育み、ヤラ雪山の美を彩っています。
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雄大な地質景観と華麗な人文遺産が交錯し、高山地帯の風景の全てが凝縮されています。ヤラ雪山を歩む一歩一歩が仙境を彷徨う感覚をもたらします。
氷雪の饗宴
ヤラ山は一年中雪に覆われ、肉眼でも氷河が確認できる。未踏峰のこの山頂は、常に神秘のベールに包まれている。
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数百万年にわたり堆積した山頂の厚い雪は、太陽の下で冠に散りばめられたダイヤモンドのように輝きを放つ。
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季節の移り変わりと共に青白い巨大氷河が解け、切り立った崖を轟音と共に流れ落ちる滝は、「天から降り注ぐ銀河」のような壮観な光景を創り出す。
高原の宝石
ヤラ山脈全域に点在する高山湖の多くは氷河活動によって形成された。大小様々な形の湖が存在する。
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4000メートル(13,123フィート)を超える高度には、ヤラ山を映す翡翠色のヤラ・ユーツォ(翡翠湖)、山霧に浮かび消える姉妹湖ヤリ・アツォとスオランツォが存在する。
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広大な森林
ヤラの植生は極めて豊かで、森林被覆率は34.02%。78科302種の薬用植物が生育し、食用キノコは全国で販売されている。
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河岸には多種多様な低木が生い茂り、山岳地帯の巨木は太陽を遮る。夏は緑豊かな景観を、秋は色彩の饗宴を創り出す。
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秘湯
雪山の麓に位置する温泉は氷と炎の協奏曲。緑豊かな谷間に隠れた天然温泉は、漂う湯煙と共に幻想的な情景を醸し出す。
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現地の伝説によると、これらの温泉の多くは「ベルザナ」(隠された温泉を意味する)と呼ばれる。聖なる湯に浸かれば、業障が速やかに消滅すると信じられている。
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高地の牧草地
カム・チベット族は主に遊牧を営み、豊かな牧草地を求めて高地を移動する。夏から秋にかけ、ヤラの広大な湿地帯と草原には数千頭のヤクや馬が放牧される。
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生物の宝庫
「一山に四季、十里ごとに異なる空」——ヤラは多様な自然環境を有し、数え切れない野生動物の理想的な棲家となっています。
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ヤラはユキヒョウ、ヒョウ、シロクビジカ、ターキン、ブルーシープ、ジャコウジカ、アカゲザル、カワウソ、マヌルネコ、エゾライチョウ、クロトキ、チベットキジなど多くの希少動物の生息地です。
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アウトドアの楽園
ヤラ山麓に広がる古代茶馬古道は、かつて数世紀にわたる交易路でしたが、今ではアウトドア愛好者に人気のスポットへと変貌を遂げています。
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毎年数多くのハイカーや登山者がこの地を訪れ、定番ルートでヤラの景観を楽しむ軽登山から、未発見の秘境を求める高山横断まで、様々なスタイルで自然を満喫しています。
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ヤラの多様な地質特性、豊かな生態資源、そして色濃く残る遊牧文化はひとつの小宇宙を形成しています。ここでは自然と文化が渾然一体となり、ガンズ(甘孜)の未来の発展に大きな可能性をもたらしています。