北海道が冬の美の頂点だと思うなら、中国東北地方に驚かされる準備をしよう。氷雪に彩られたこの地は、荒々しさと繊細さが独特に調和している。

その美は一瞥で理解できるものではなく、山々や森林、湖、野原に秘められている。『スノーピアサー』の果てしない旅路であり、『白鹿原』の凍てつく風景であり、作家・張暁風が描いた「雪を抱く枝」——清浄無垢の領域だ。

ここでは舞い落ちる雪片が大地を銀のタペストリーに変える。しかし風景を超え、東北地方は希少な野生生物の聖域でもある。
アムールトラの物語
歴史的にアムールトラは中国東北部に広く生息していた。しかし清朝崩壊後の大規模な移住により森林伐採が進み、生息地が消失。狩猟も個体数を激減させ、絶滅寸前に追いやった。アムールヒョウも同様の危機に直面した。

20世紀後半、中国国内に残ったアムールトラとヒョウはわずかだった。合同調査によれば、アムールトラは20頭未満、アムールヒョウは7-12頭のみが確認されていた。


生態系回復のため、科学者たちは東北虎豹国家公園を設立。これらの努力が実り、2017年に27頭と42頭だったトラとヒョウの個体数は、2022年には約70頭と80頭まで増加した。

延吉:静謐と魅力の都市
延吉市は吉林省・延辺朝鮮族自治州の州都で、長白山脈に抱かれた活気と温もりある街だ。自然美と歴史的意義が織りなす独特の景観は息をのむほど。

空は常に青く、空気は清浄。大都市とは異なる穏やかでスローな時間が流れる。
朝鮮族民俗園
市街地にある朝鮮族民俗園は、伝統的な朝鮮族の村を再現。建築物や生活風景、手工芸品が展示され、民族衣装を着て文化体験ができる。

西市場
延吉西市場は街のエッセンスを体感できる場所。活気あふれる市場では生鮮食品から朝鮮伝統料理まで揃う。

東北虎豹国家公園
東北虎豹国家公園は中国最大の国立公園で、黒龍江省と吉林省、ロシア極東地域にまたがる。温帯林、湿地、草原など多様な地形と生態系を誇り、完全な食物連鎖を有する。

アムールトラやヒョウをはじめ、ヒグマ、ツキノワグマ、オオヤマネコ、ユーラシアカワウソなどが保護されている生物多様性のホットスポットだ。

渡り鳥観察
公園は渡り鳥の重要中継地でもある。アジア有数のバードエリア・図們江河口湿地には大群が飛来。多様な種を観察でき、地域の生態系維持に貢献している。

氷上漁:古代からの伝統
査干湖、興凱湖、鏡泊湖などで続く氷上漁は、商業漁業より伝統的技法。氷に穴を開け網を仕掛け待つ。自然の厳寒を体感しつつ古代の漁法に触れられる。

鏡泊湖:火山が生んだ奇跡
鏡泊湖は数千年前の溶岩流が牡丹江の古河床をせき止めて形成された火山湖。全長約45kmのくねった湖面が特徴で、溶岩洞窟から落下する吊水楼瀑布は圧巻。冬季には凍結し氷の芸術となる。


横道河子東北虎林園:保護区の役割
横道河子東北虎林園はアムールトラの「域外保全」を担う。1986年に8頭で始まった保護区は、現在までに1,000頭以上の繁殖に成功。

ここでは成長段階別のトラを観察し、社会行動や繁殖活動を学べる。絶滅危惧種保護の取り組みも理解できる。

ハルビン中央大街:時空を超える散歩道
ハルビン中央大街は全長1,450mの歴史の川。ルネサンスからバロックまで様式建築が連なり、他にない体験を提供する。

敷石や手すり、窓枠がそれぞれ物語る。夜間照明で照らされると、タイムスリップしたような感覚に。

聖ソフィア大聖堂
ハルビンの聖ソフィア大聖堂はロシアの歴史を象徴する精神的思索の場。ドームや赤レンガの壁、ステンドグラスが独特の美を創出。鐘の音が周囲に響き渡り、現世から一時の休息を与える。

ハルビン氷雪大世界
ハルビン氷雪大世界は冬の夢幻郷。氷雪彫刻が林立し、夜間はカラフルな照明がオーロラのような幻想的な雰囲気を醸す。
